「クラウド型」を推す四つ目の理由は、情報の「多様化」への対応力です。

以前「時間の壁」「距離の壁」の話をしましたが、「壁」はそれだけではありません。

この「多様化」もまた、薬剤師にとって大きな「壁」になりつつあるのです。

※「多様化」は今年の日本医薬品情報学会(第21回)のテーマにもなっています。


これは、近年の薬剤師業務の細分化・専門化に起因します。

例えば抗がん剤一つ取ってみても、製剤(調製)担当者に要求される情報と、病棟(薬学的管理)担当者に要求される情報は、全く「異質」「別次元」のものであり代替は利きません。

するとどういうことが起こってしまうか?

担当業務に関係のない情報には無関心になっていきます(本業で手一杯ですから)。

片や担当業務に密接した情報は、担当者にとっては「常識」になってしまいます。

無関心(=知る必要がない) vs 常識(=伝える必要がない)

かくして部署間に「多様化の壁」ができ、情報共有しようという機運が失われてしまうのです。


ただ、マンパワーが潤沢にある施設ならばそれでもいいのかもしれません。

認定・専門薬剤師が屋台骨となり、各部署が「この道一本」でやっていけるからです。

しかし、薬剤師不足の施設ではそうはいきません。

何しろ一人の薬剤師が「異質」「別次元」の部署を掛け持ちしているのですから(涙)。

情報共有を抜きにして、薬剤師業務の効率化もレベルアップも望める道理がないのです。


皆さんは広島佐伯薬剤師会が運営する「薬剤師ノート」というサイトをご存知でしょうか?

このページは今まで薬剤師が質問を受け解決したこと、また自分で疑問に思って調べたことなど、様々な知恵や知識を書き留めておくページです。自らが調査した事例は将来他の薬剤師も調べることがあるかもしれません。そのような時に参考となる百科事典を作成することがこのページの目的です。
(薬剤師ノートHPより引用)

秀逸なアイデアですが、実は「クラウド型」でもこれと同じことが実現できます。

後述するプラットフォーム「kintone」にはコメント欄の機能が標準装備されています。

一種の掲示板機能なのですが、当院では薬品毎に設けられているこのコメント欄に自らが入手した「再現性」のあるDI実例を書き込んでもらうルールとしたのです。

すると、これまで自力では知り得なかった「多様化」情報が蓄積されていくこととなります。

いわば、薬剤師の薬剤師による薬剤師のための医薬品集

将来的に「クラウド型」は、薬剤師業務のどのようなシーンにおいてもサポート可能な情報源へと成長していくことでしょう。

※ちなみに当院では「薬剤師ノート」のリンクも薬品毎に「クラウド型」に貼付しています。

これは既存の医薬品集では得られない機能です。


【付記】

当院ではコメント欄に「適応外使用情報」「ローカルルール」「メーカー会員サイトのID/PW」なども書き込んでいます(結構重宝します)。

コメント欄に自由に書き込みができるのは便利ですが、情報の信頼性に懸念が残ります。

kintoneでは、新着コメントがポータル画面に表示される仕組みとなっています。

よって、疑問点があれば投稿者に質問することも、補足することも可能なのです。


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