「三つの壁」…ですか?是非詳しく教えてください。

「情報提供」が薬剤師にとって重要な業務だということは冒頭でお話した通りです。しかし、情報の「提供」を行うには、前段で情報の「収集」が必要となります。当然ですよね?病棟で「情報収集」を行おうとした場合、すぐ気付かされることがあります。「時間的障壁」と「物理的障壁」です。DI室から遠く離れた病棟に点在する病棟薬剤師は、DI室が管理する情報を「いつでも」「どこでも」利用できなければ、相当な不便を強いられることとなるからです。

時間的障壁と物理的障壁

書籍や資料を見るためだけに、病棟とDI室をそう何度も往復する訳にはいきませんものね。


そうなんです。ただ幸いなことに、当院は院内LANやイントラネットといったインフラに恵まれていたため、平成22年度に「医薬品安全性情報等管理体制加算」が新設されたのを機に、これらを活用して病棟薬剤師をサポートする仕組みを構築することにしました。まず、安全性情報に関するデータベースを作成し、院内LANを用いて関連資料を病棟薬剤師と共有できるよう整備しました。 次いで紙媒体の資料の電子化をはじめ、DI室で収集した情報の共有・一元化を進めていったのです。

その頃はまだkintoneを導入されてなかったのですよね?ところが院内LANやイントラネットを用いたやり方に何か重大な問題が生じてしまい、方向転換を図らねばならなくなった…図星ですか?

う~ん、鋭い。お察しの通りです。確かにこの辺りから「第三の障壁」(技術的障壁)が存在していることに気付き始めました。つまり、DI室が管理するデータベースの中から必要な情報を迅速かつ適切に入手するスキル(情報リテラシー)には個人差があり、PC操作が苦手なスタッフや経験の少ない若手がどうしても「情報弱者」となっていることがわかってきたのです。

そんな「情報弱者」を救うため、Hospital Formulary(院内医薬品集)の着想が生まれた、ということでよろしいでしょうか?

…ま、まあ概ねそんなところです。同じ薬のことを調べるのに、用途に応じて媒体(書籍・サイト等)を使い分けしなければならない。ず~とそれが常識だと思い込んでいたのですが、少し冷静に考えればナンセンスなことなんですよね。若手が戸惑うのも当然です。薬品名で検索するだけで、実務上必要な情報は種類を問わず何でもアクセスできる。そんなオールインワンの情報源として「医薬品集」の概念が見事にハマった訳です。

データベースの構成

聞けば、DI業務に関して興味深い比喩をされるそうですね?

はい。私はDI室の仕事を紹介する際、「海女」に喩えることがよくあります。矢継ぎ早に寄せられるリクエストに対し、酸欠状態(!?)になりながら、獲物を探し当てるような仕事だからです。とすれば、Hospital Formularyは、海女さんに「酸素ボンベ」を背負わすような行為なのかもしれません。 「海女なら素潜りできるように鍛えるべきだ」という意見もあろうかと思います。ただ、我々にとって大切なのは「素潜りできること」ではなく、獲物をいかに美味しく調理(評価・判断)することだった筈です。見渡せば、「荒波」の医療現場に放り込まれたうら若き海女たちは皆、酸欠状態でアップアップで調理どころではありませんでした。そんな惨状を知り、Hospital Formularyの必要性を痛感したという訳です。

ただ、それならば市販のデータベースソフトでも実現可能な話ですよね?そこをあえて弊社のkintoneをお選びいただいた理由は?

誘導がお上手ですね(笑)。スタンドアローンだと今度は「時間的障壁」と「物理的障壁」がクリアできませんものね。かと言って、大学(例.G.P.I.S.)みたいに莫大なコストと労力をかけてシステム開発する訳にもいきません。そこで「引き寄せ」られるようにたどり着いたのが、クラウド型データベース「kintone」だった、という訳です。

ありがとうございます。数ある製品の中で、一体kintoneのどのような点が目を引いたのでしょうか?

フフフフ。それは貴社のホームページに書いてある通りですよ。わざわざ言わせるんですか?(笑)

そこを何とかお願いします<(_ _)>。

※kintoneホームページより
①例えばこんなアプリを3分で作成
②プログラミングせずに作れる
③システム連携や、高度な開発にも対応
④「お手頃価格」でスタートできます。

まず①は大きかったですね。既にデータベース(Excel)は作っていたのですから。それを簡単にkintoneに移植できて楽でした。②も凄く助かりました。お恥ずかしい話ですが、DI担当とはいえデータベースの知識に長けている訳ではありません。学会では、ファイルメーカーなどを駆使したシステムが数多く発表されていますが、そんな真似はとてもできない。ましてプログラミングなんて…。きっと、ソフトが使えるようになる前に薬剤師人生が終わってしまうことでしょう(涙)。後で知った話ですが、kintoneは全国的にも有数のノンプログラミングツールなんですよね?違いました?③に関しては、現状ではたいして高度なことはやってはいないんですが、拡張性の高さは心強いです。④も大切なポイントでした。年間5万円未満のコストでここまでやれるのは驚異的でした。昔なら軽く1、2桁は違ってたところでしょうから。