気を取り直した私は、今度は若手の反応薄の理由に目を向けました。

情報収集に苦しんでいた彼らにとって、「クラウド型」はまさしく僥倖だった筈。

にもかかわらずこの反応の薄さは一体・・・?

たどり着いた答えは、私を愕然とさせるに十分なものでした。

  彼らは「クラウド型」よりもずっと便利な方法を既に使っていたのです。

  「先輩に訊いて済ます」という方法を・・・(涙)。

確かに知識も経験も豊富な先輩に相談すれば、質問の背景も聞き出してくれるでしょうし、ニーズに沿った情報の収集・評価・加工・提供だってしてくれることでしょう。

独力で対応するより、はるかに適切な回答が返せる道理です。

質問者の満足度も得られることでしょう。

しかしそんなことばかり続けていて、若手の成長は望めるでしょうか?

ベテラン陣はやがて次々と臨床の場から「退場」していきます。

後を引き継ぐ彼らが、将来もなお「情報弱者」のままだったとしたら・・・。


病院薬剤師にとってチーム医療は今や「花形」の業務。

それを夢見て先進・中核病院である当院を志望してくれる学生も毎年一定数はいます。

ただ、深刻な薬剤師不足が何年も続く中、リテラシーの向上を待たずに医療の現場にスタッフを投入せざるを得ない状況に当院は置かれていきました。

※当院では現在、2病棟を薬剤師1名で担当しています(しかも半日で!)。

当然先輩薬剤師が教育を行いますが、あくまで「最低限」「最小限」の話。

「情報弱者が情報弱者を教育する」といったことも生じていたかもしれません。

薬剤師数が充足している施設の方からすれば滑稽な話かもしれませんね・・・。


若手が「情報弱者」「教育不足」であることはベテラン陣とて承知しています。

けれど、若手から相談を受けても急場を凌ぐことしかできないのが実情なのです。

  竿の使い方すら知らぬ若手に魚の釣り方を教えている余裕はない・・・。

ベテラン陣だって沢山の仕事を抱えてるのですから。

だから、せめて質問に対応できるよう、自らのデータベースを充実させようとするのです。

一方、若手はますますベテランに依存し、「情報弱者」から抜け出せなくなっていくのです。


以上、薬剤師不足の当院で「クラウド型」を導入して浮き彫りとなったことをまとめます。

ベテラン薬剤師 ⇒ 若手の救済のためDB充実が必要 ⇒ 「クラウド型」に関心が高い

若手薬剤師 ⇒ 情報弱者ゆえベテランに依存 ⇒ 「クラウド型」に関心が低い

事の真相がわかった以上、そして薬剤師不足が更に深刻さを増す以上、一日も早く若手に「クラウド型」に関心を持ってもらわねばなりません。

この「負のスパイラル」から脱出するカギは「クラウド型」が握っているのですから。


では今回はこの辺で失礼します。

早々

※次回より「第2章 コンテンツ編」が始まります。