悩める薬局長のための薬剤師不足でも業務改善できる クラウド型院内医薬品集を制作するためのブログ

業務改善のカギはDI業務だった!院内医薬品集のクラウド化だった!

ブログ「病院薬剤師って素晴らしい!」を主宰しております、病院薬剤師だまさんです。

このブログではクラウド型院内医薬品集の制作手順を解説していきます。

クラウド型院内医薬品集(※本ブログ内で「ハイパー医薬品集(Hyperformulary)」と命名しました)は2013年以来、日本医薬品情報学会その他の学会で発表され、薬事日報やYahoo!ニュースでも取り上げられた、誰でも簡単に作ることのできるコストパフォーマンスの高い「新時代」の情報ツールです。

クラウド型院内医薬品集を手に入れることで、DI室から離れた場所でも医薬品情報が迅速かつ容易に収集できるようになります。

調剤業務・病棟業務・DI業務が効率化され、薬剤師不足でも業務改善が可能となります。

また、地域連携にも低コストで絶大な威力を発揮します。

なお、病院薬剤師だまさんは「ハイパー医薬品集」普及のため、リタイア後に医薬品集制作業(大学堂)を起業する予定です。

乞うご期待を。

※現在更新を休んでいます。

タイトル

ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰


【大感謝】 開設291日目で1万アクセス突破!

1.属性情報(フォーム設計) ~医薬品集をデータベースとして最大限に活用するための「ひと手間」~

属性情報を登録しておくと下記のようなニーズに迅速に対応できるようになります。

・当院採用の注射薬は何品目?そのうち後発品は何品目?

・ハイリスク薬のリストが欲しい。そのうち腎機能の確認が必須なのは?

これこそデータベースの醍醐味ですよね。


全部「文字列(1行)」でOK?

文字列(1行)

属性情報のフォームパーツは、全てこの「文字列(1行)」でも特段困りはしません。

でも、ここからはもう少し工夫したフォーム設計をご提案しようと思います。


一つしか選択肢のない属性

例えば下記のような場合です。

・投与区分(内・外・注・歯)

このような場合は「ラジオボタン」か「ドロップダウン」をパーツに選択するといいでしょう。

ラジオボタン or ドロップダウン

「ドロップダウン」は「ラジオボタン」よりも選択肢が多い場合に使うと便利です。


選択肢が複数ある属性

例えば下記のような場合です。

・規制区分(麻・向・毒・劇・処)

このような場合は「チェックボックス」か「複数選択」を使用します。

チェックボックス or 複数選択


all or nothing の属性

このような場合は「チェックボックス」を縦並びに配置し、その右に「リンク」を配置します。

チェックボックス & リンク

「チェックボックス」には属性を、「リンク」にはそれを裏付ける情報を貼り付ける訳です。

具体的には下記のような感じになります。

☑ RMP提出品目 http://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/items-information/rmp/0001.html#select2 (PMDA)

え?URLが見苦しい・・・ですか?

ならばこんな方法はどうでしょう?

チェックボックス & リッチエディター

「リッチエディター」はハイパーリンクが貼れるので、こんな仕上がりとなります。

☑ RMP提出品目 ※RMP提出品目一覧(PMDA)

すっきりした見映えになりますよね。

第2章 コンテンツ編

骨組みができたら、次はコンテンツを作成していきます。

コンテンツを分類する

まずはコンテンツをテーマ別に分類します。

特に決まりがある訳でありませんし、個々のニーズに沿ったものを作ればよいと思います。

当院の場合、「属性情報」「基本情報」「製剤情報」「用量情報」「薬効(代替薬)情報」「その他(ノンジャンル情報)」「付録アプリ」の7つに分類してコンテンツを作成しています。

1.【属性情報】
・投与区分(内・外・注・歯)
・規制区分(麻・向・毒・劇・処)
・先発・後発区分
・ハイリスク薬区分
・RMP提出品目
・特に注意が必要な品目(腎機能・高齢者・妊婦)
・流通管理薬
・TDM対象薬
・投与日数制限薬
・希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)

2.【基本情報】
・添付文書
・インタビューフォーム
・審査報告書
・患者向医薬品ガイド
・くすりのしおり
・医薬品リスク管理計画書(RMP)
・重篤副作用疾患別対応マニュアル
・緊急安全性情報(イエローレター)
・安全性速報(ブルーレター)
・医薬品医療機器等安全性情報
・医薬品安全対策情報(DSU)
・適正使用情報
・患者指導用資材
・FAQ(よくある質問)
・製剤写真(識別コード)
・各種お知らせ文書
・各種コード一覧
・薬価

3.【製剤情報】
・配合変化情報(注射薬のみ)
・粉砕・脱カプセルの可否(内服薬のみ)
・簡易懸濁法の可否(内服薬のみ)

4.【用量情報】
・透析患者(HD・PD・CRRT)への投与量
・保存期CKD患者への投与量
・肝機能低下患者への投与量
・小児への投与量

5.【薬効情報】
・比較一覧表
・等価換算表
・新製品情報

6.【その他】
・薬剤師ノート

7.【付録】
・ガイドラインの地図帳
・副作用の地図帳
・病原体の地図帳
・日病薬e-ラーニング確認問題集


ラベルとグループで小見出しを付ける

各コンテンツの冒頭には「小見出し」(例.【基本情報】)があると便利です。

「小見出し」を付けるためのフォームパーツは、「ラベル」と「グループ」の二つがあります。

ラベル

「ラベル」はフォームにテキストを追加するパーツです。

フォームにタイトルを付けたり、入力項目に説明を付けたりできます。

ラベルに色をつけたり、文字のサイズを変更することも可能です。

※詳しくはこちらの動画もご覧ください。

グループ

「グループ」はフィールドをグループ化して、グループ内のフィールドの表示/非表示を切り替えられるようにするパーツです。

コンテンツが増えるにつれ、「クラウド型」はまるで「巻物」のように縦長のページとなってしまうため、目的とする情報が見つけづらくなってしまいます。

ところが「グループ」を用いてコンテンツをグループ化すれば、目的外の情報をクリック一つで非表示に切り替えることができるようになります。

※プラグインによってはグループ内のレコードに適用すると無効化することがあるようです。その場合はラベルを使用しましょう。

ここまでのおさらい

さて、いよいよ佳境、コンテンツ編に突入します。

だいぶ横道にそれてしまったので、ここまでの流れを一度おさらいしておきましょう。


手順1:kintoneを契約する

まずプラットフォームであるkintoneを使えるようにします。

ただし、最初から本契約するのはお勧めしません。

契約すると毎月最低でも4,212円が必要になります。

「クラウド型」が使い物にならないうちにそれではツラいですよね?

よって最初のうちは30日間無料お試しでいきましょう(詳しくはこちら)。


手順2:骨組み(フォーム)を設計する。

これに関しては、「クラウド型」の骨組みを作る(前編後編)で解説しています。

  「Excelファイルを読み込んで作る方法」がおすすめ。

  盛り込みたいデータを可能な限りExcel(またはCSV)ファイルにまとめる。


・・・といったことをお伝えしたのですが、ここまではよろしいでしょうか?


不安のある方のために、手順2を一緒に振り返ってみましょう。

①「YJコード」「商品名」「一般名称」をまとめたCSVファイルを用意します。

YJコード商品名一般名称
1124001F2029ユーロジン2mg錠エスタゾラム錠
1124003C1092ベンザリン細粒1%ニトラゼパム細粒
1124003F2222ベンザリン錠5ニトラゼパム錠
1124008F1032ロヒプノール錠1フルニトラゼパム錠
1124009F2076ブロチゾラムOD錠0.25mg「サワイ」ブロチゾラム錠(2)


②下の図で「+」の部分をクリックすると、kintoneアプリストアに移動します。

アプリ


③あたらしくアプリをつくるで「CSVを読み込んで作成」をクリックします。

あたらしくアプリをつくる


④CSVファイルからkintoneアプリを作成する(1/3)で「作成を開始する」をクリックします。

CSVファイルからkintoneアプリを作成する①


⑤CSVファイルの準備(2/3)でチェックを全て入れ、「アップロードへ進む」をクリックします。

CSVファイルの準備

⑥CSVファイルを読み込んでkintoneアプリを作成する(3/3)で「参照」をクリックし、①のCSVファイルを選択します。

CSVファイルを読み込んでkintoneアプリを作成する

⑦❷プレビューを確認するで表示が問題ないかを確認します。

⑧❸アプリの作成を開始するでフィールドタイプ(ここでは「文字列(1行)」)を選択したら、「作成」をクリックします。

アプリの作成を開始する


⑨アプリが完成しました。あとはアプリ名を付け、レコードの配置も整えましょう。

完成したアプリ

【コラム】 導入して浮き彫りとなったこと(後編)

気を取り直した私は、今度は若手の反応薄の理由に目を向けました。

情報収集に苦しんでいた彼らにとって、「クラウド型」はまさしく僥倖だった筈。

にもかかわらずこの反応の薄さは一体・・・?

たどり着いた答えは、私を愕然とさせるに十分なものでした。

  彼らは「クラウド型」よりもずっと便利な方法を既に使っていたのです。

  「先輩に訊いて済ます」という方法を・・・(涙)。

確かに知識も経験も豊富な先輩に相談すれば、質問の背景も聞き出してくれるでしょうし、ニーズに沿った情報の収集・評価・加工・提供だってしてくれることでしょう。

独力で対応するより、はるかに適切な回答が返せる道理です。

質問者の満足度も得られることでしょう。

しかしそんなことばかり続けていて、若手の成長は望めるでしょうか?

ベテラン陣はやがて次々と臨床の場から「退場」していきます。

後を引き継ぐ彼らが、将来もなお「情報弱者」のままだったとしたら・・・。


病院薬剤師にとってチーム医療は今や「花形」の業務。

それを夢見て先進・中核病院である当院を志望してくれる学生も毎年一定数はいます。

ただ、深刻な薬剤師不足が何年も続く中、リテラシーの向上を待たずに医療の現場にスタッフを投入せざるを得ない状況に当院は置かれていきました。

※当院では現在、2病棟を薬剤師1名で担当しています(しかも半日で!)。

当然先輩薬剤師が教育を行いますが、あくまで「最低限」「最小限」の話。

「情報弱者が情報弱者を教育する」といったことも生じていたかもしれません。

薬剤師数が充足している施設の方からすれば滑稽な話かもしれませんね・・・。


若手が「情報弱者」「教育不足」であることはベテラン陣とて承知しています。

けれど、若手から相談を受けても急場を凌ぐことしかできないのが実情なのです。

  竿の使い方すら知らぬ若手に魚の釣り方を教えている余裕はない・・・。

ベテラン陣だって沢山の仕事を抱えてるのですから。

だから、せめて質問に対応できるよう、自らのデータベースを充実させようとするのです。

一方、若手はますますベテランに依存し、「情報弱者」から抜け出せなくなっていくのです。


以上、薬剤師不足の当院で「クラウド型」を導入して浮き彫りとなったことをまとめます。

ベテラン薬剤師 ⇒ 若手の救済のためDB充実が必要 ⇒ 「クラウド型」に関心が高い

若手薬剤師 ⇒ 情報弱者ゆえベテランに依存 ⇒ 「クラウド型」に関心が低い

事の真相がわかった以上、そして薬剤師不足が更に深刻さを増す以上、一日も早く若手に「クラウド型」に関心を持ってもらわねばなりません。

この「負のスパイラル」から脱出するカギは「クラウド型」が握っているのですから。


では今回はこの辺で失礼します。

早々

※次回より「第2章 コンテンツ編」が始まります。

【コラム】 導入して浮き彫りとなったこと(前編)

前略 悩める薬局長さま

プラットフォーム編をご読了いたただき、ありがとうございます。

今回は少しクイズにお付き合い願います。

≪問題≫
当院では2015年よりクラウド型院内医薬品集を本格稼働させました。ではその際、「クラウド型」に強い関心を示したスタッフは次のうちのどちらだったでしょうか?
  A.ベテラン薬剤師
  B.若手薬剤師


いかがでしょうか?

これまでにも述べてきた通り、私が「クラウド型」を制作しようと思った動機は、若手の情報リテラシー不足を補うためでした。

彼らはいわば「情報弱者」。

ならば、答えはBの若手薬剤師・・・と言いたいところなのですが、いざ蓋を開けてみれば若手薬剤師の反応は薄く、むしろAのベテラン薬剤師の方が強烈に喰いついて来たのでした(詳しくはこちら)。

まとめると次の通りです。

「クラウド型」に対して・・・

ベテラン薬剤師 ⇒ 関心が高い

若手薬剤師 ⇒ 関心が低い

予想とは正反対の結果に私は困惑しました。

だってそうではありませんか?

知識も情報リテラシーも十分に兼ね備えているベテラン陣にとって、「クラウド型」は使う必要のない、いわば「無用の長物」だった筈。

なのにこの反応は一体・・・?


長考の末、私はようやくその理由を突き止めることができました。

要するに、ベテラン陣は手持ちの知識(データベース)を増やしたかったのです。

突如目の前に現れた「新手」の情報源。

その中に含まれている、未知の情報に関心があっただけだったのです。

「薬剤師の薬剤師による薬剤師のための医薬品集」を目指していた私としては、ベテラン陣のこの反応にいささかげんなりしました。

自分の欲しい情報を欲しいだけ抜き取って、「骨と皮」だけになっていく「クラウド型」。

そんな情景がふと頭に浮かんでしまったからです。

※ただ、ベテラン陣のこの反応が利己的な理由からではないことは、後々明らかとなります。

  どうして「クラウド型」の理念が伝わらないのか?

  それとも最初から「絵空事」として受け止められているのか?


私にとって苦悩の日々が続きました(後編に続く)。

【kintoneに関する取材記事】 最終回 今後の展望

kintoneをHospital Formulary以外の用途に活用されるご予定は?

もちろんあります。最低でも200個ものアプリを使えるkintoneですから、少しずつ勉強しているところです。導入相談Cafeにもうかがいましたしね(笑)。今のところは、下記の通り「地図帳シリーズ」というのを作成中です。まあテーマ別の簡単なデータベースですね。

・ガイドラインの地図帳
・レジメンの地図帳
・副作用の地図帳
・病原体の地図帳
・術前中止薬の地図帳(予定)

kintoneを用いた他職種、他施設との連携は考えておられますか?

クラウドサービスなので十分可能だと思いますが、現状では当院の薬剤師のことだけで精一杯です。ただ、当院を退職した元同僚もID/PWをこちらで変えない限り、転職先の施設でも引き続きHospital Formularyを使用できる状況です。個人情報は一切入っていませんからね。他職種に対しても、システム的には項目毎に閲覧の可否が設定できますし、現場に見合った情報を活用されやすい形で提供するために、Hospital Formularyは有用なツールになり得ると考えています。

今日は長時間に渡りお話いただき、誠にありがとうございました。

随分悪ノリ(!?)しちゃいましたけど、こちらこそありがとうございました!(了)

【kintoneに関する取材記事】 第4回 「必須アイテム」への道筋

今後の課題についてもおうかがいしたいのですが。

はい、本格稼働から1年半を経過したHospital Formularyですが、まだほんの序章に過ぎません。課題は山積しています。薬事日報さんの記事にもありますが、「利用率の向上」が目下最大の課題ですね。

えっ?これだけ便利なシステムなのに利用率が伸びないのですか?

残念ながらそうなんです。「情報弱者」のために作ったHospital Formulary。しかし、真っ先に飛びついたのは、皮肉にもこんなシステムなんかなくても情報収集のできるベテラン陣だったのです。情報リテラシーの格差が縮まるどころか逆に広がってしまった訳です。「必須アイテム」を作るつもりだったのに、「(ないよりはあった方がましという程度の)便利グッズ」を作ってしまったのか?当初は随分と悩みました。まあ今では、先輩の背中を見て若手も使ってもらえたらいいな、と(苦笑)。

それ以外にも原因は?

デバイス不足も影響しました。病棟には自由に使えるインターネット端末がほとんどありません。kintoneはスマホでも利用可能なので心配してなかったんですが、病棟でスマホを使っていると他のスタッフに私用と誤解されるそうで…。蓋を開けてみないとわからないもんですよね。そこで余った予算でタブレットを数台購入してもらったのですが、これの利用率も今一つ(涙)。「情報弱者」を甘く見ていたことを思い知られました。だから今でも…なんです。

ええ~!!

驚き過ぎですよ(笑)。使わないものに予算はいただけませんから当然のことです。むしろ、「白紙に戻すこともあり得る」ことを半分冗談(半分本気!?)でチラつかせながらスタッフの尻を叩いている次第です。そのかいもあって、最近では利用率もだいぶ改善してきました。

※2016年度より無事予算化が認められました。

Hospital Formularyを構築する上で何か困られたことは?

やはり「スキャンデータ」の扱いですね。参考図書を自炊(スキャン)して添付すれば手っ取り早い訳です。でも、どうしても著作権の問題が絡みます。現在でも若干のスキャンデータを使用していることは否定しません。それが絶対にダメだと言われたら、全て手入力するしかありませんが、じゃあそれで全く問題は解消するのか?スキャンしたデータをOCR処理してテキスト化するのは許されるのか?その辺が明確になるまではビクビク(!?)しながら扱うことになりそうです。

メンテナンス上の課題もあるとうかがいましたが?

はい。Hospital Formularyの本格稼動に際し、最も懸念の声が寄せられたのがメンテナンスに関してでした。私がいなくなったらメンテナンスは大丈夫か?、と。「そんな先のことより今使ってよ!」と言いたくなっちゃいますが・・・(笑)。ただ、実際にやってみるとわかりますが、レコードの追加・変更、リンクや添付ファイルの更新など、Hospital Formularyのメンテナンスは必ずしも薬剤師でなくてもできる業務なのです。

言われればそうですね。その業務を事務員に代行させる訳ですか?

その通りです。「薬剤師でなくとも可能な業務」の仕分けと助手の利活用については、亀田総合病院・舟越亮寛先生もかねてより提唱されており同感です。当院でも暇を見て事務さんに入力を手伝ってもらったり、サイトを巡回してもらったりしています。ノウハウさえ確立すれば、事務主導でメンテナンスを行うことも夢ではないと考えています。リンク先の情報が自動更新されるのなら、メンテナンス自体も必要ありませんしね。

ただ、薬の知識のない事務員が入力すると信頼性が…。

その点はちゃんと考えています。事務専用のアカウントを用意していますので、事務員がメンテナンスした箇所は一目でそれとわかります。それを後ほどDI担当者が承認(上書き保存)する訳です。

様々な想いが込められたHospital Formulary。最終的なゴールはどこに見据えておられますか?

三つの変化

ご記憶ですか?最初の方で、「情報弱者を救うためHospital Formularyの着想が生まれたのか?」とたずねられた時、私少し言葉を詰まらせましたけど(笑)、実はその着想は虎の門病院・林昌洋先生からいただいたものなんです。

添付文書よりも踏み込んだドーズ・工程の管理を院内独自の「プロトコール集」、すなわちHospital Formularyをもって行い、「マクロ」のチーム医療を実践する。

そのお話をうかがった時、私は将来的にHospital Formularyが病院薬剤師にとっての「必須アイテム」となると確信しました。そして、(時間の関係上詳しくはご説明できませんが)RMP(医薬品リスク管理計画)およびPBPM(プロトコールに基づく薬物治療管理)の実践に向け、Hospital Formularyの作成を目指すことにしたのです。

「情報源」そして「情報共有の場」としてのHospital Formularyが軌道に乗った後は、「プロトコール集」としてのHospital Formulary作りに邁進するつもりです。

【kintoneに関する取材記事】 第3回 kintone導入によるアウトカム

実際にkintoneを導入されてみて、どのような点が良かったのかお聞かせいただけますか?

ポータル画面

はい、Hospital Formularyを本格稼働させたのは昨年2月からです。準備期間はわずか1ヶ月程度で済みました。「導入するからには失敗は許されない」、そんな思いや執念があったことは事実です。「見事だな!しかし自分の実力でやれたのではないぞ。kintoneの性能のおかげだという事を忘れるな!」と戒められそうですが(※意味不明の方はこちら)。

…オッホン!次、行きま~す。これが第18回日本医薬品情報学会総会・学術大会(於岡山)で発表されたポスターの一部ですね?

アウトカム

ご覧の通り、これまで懸案だった「三つの壁」がkintone導入により一気に解消されています。

「想定外」のメリットもあったとうかがいましたが?

はい、それは「コメント欄」のことです。




一種の掲示板機能なのですが、薬品毎に設けられているこのコメント欄に、自らが入手した「再現性」のあるDI実例を書き込んでもらうルールとしたのです。各人がこのコメント欄を積極的に利用すれば、これまでDI室が知り得なかった現場の情報が蓄積され、将来的にHospital Formularyが薬剤師業務のどのようなシーンにおいてもサポート可能な情報源へと成長していくこととなります。正直、ここまでの展開ができるとは、導入前には予想していませんでした。

ただ、コメント欄はDI担当ではないスタッフも書き込む訳ですよね?情報の信頼性の担保はどうお考えですか?

コメント欄に書き込む際には必ず「出典」「記入者名」を明記するよう義務付けています。新着コメントはポータル画面に時系列で表示されますので、誰が書き込んでもスタッフ全員の目に触れる仕組みとなっています。

DI担当者にとってのメリットも大きかったのですよね?

もちろんです。Hospital Formularyという医薬品情報の「最終」保管場所ができたおかげで、これまで頻発していた情報の散逸が減りました。情報の抽出・二次利用も容易になりました。そして、「DI担当者はHospital Formularyのメンテナンスに専念すればよい」、これが何よりも大きかったですね。管理者の視点でHospital Formularyを俯瞰すれば、「空欄を埋めなくちゃ」とか、「情報を更新しなくちゃ」とか、「カテゴリを追加しなくちゃ」とか、次にやるべき仕事が自然に浮かんで来ます。いずれDI担当者も代替わりします。次世代になっても、「羅針盤」的な役割をkintoneには期待しているところです。

【kintoneに関する取材記事】 第2回 「三つの壁」の克服

「三つの壁」…ですか?是非詳しく教えてください。

「情報提供」が薬剤師にとって重要な業務だということは冒頭でお話した通りです。しかし、情報の「提供」を行うには、前段で情報の「収集」が必要となります。当然ですよね?病棟で「情報収集」を行おうとした場合、すぐ気付かされることがあります。「時間的障壁」と「物理的障壁」です。DI室から遠く離れた病棟に点在する病棟薬剤師は、DI室が管理する情報を「いつでも」「どこでも」利用できなければ、相当な不便を強いられることとなるからです。

時間的障壁と物理的障壁

書籍や資料を見るためだけに、病棟とDI室をそう何度も往復する訳にはいきませんものね。


そうなんです。ただ幸いなことに、当院は院内LANやイントラネットといったインフラに恵まれていたため、平成22年度に「医薬品安全性情報等管理体制加算」が新設されたのを機に、これらを活用して病棟薬剤師をサポートする仕組みを構築することにしました。まず、安全性情報に関するデータベースを作成し、院内LANを用いて関連資料を病棟薬剤師と共有できるよう整備しました。 次いで紙媒体の資料の電子化をはじめ、DI室で収集した情報の共有・一元化を進めていったのです。

その頃はまだkintoneを導入されてなかったのですよね?ところが院内LANやイントラネットを用いたやり方に何か重大な問題が生じてしまい、方向転換を図らねばならなくなった…図星ですか?

う~ん、鋭い。お察しの通りです。確かにこの辺りから「第三の障壁」(技術的障壁)が存在していることに気付き始めました。つまり、DI室が管理するデータベースの中から必要な情報を迅速かつ適切に入手するスキル(情報リテラシー)には個人差があり、PC操作が苦手なスタッフや経験の少ない若手がどうしても「情報弱者」となっていることがわかってきたのです。

そんな「情報弱者」を救うため、Hospital Formulary(院内医薬品集)の着想が生まれた、ということでよろしいでしょうか?

…ま、まあ概ねそんなところです。同じ薬のことを調べるのに、用途に応じて媒体(書籍・サイト等)を使い分けしなければならない。ず~とそれが常識だと思い込んでいたのですが、少し冷静に考えればナンセンスなことなんですよね。若手が戸惑うのも当然です。薬品名で検索するだけで、実務上必要な情報は種類を問わず何でもアクセスできる。そんなオールインワンの情報源として「医薬品集」の概念が見事にハマった訳です。

データベースの構成

聞けば、DI業務に関して興味深い比喩をされるそうですね?

はい。私はDI室の仕事を紹介する際、「海女」に喩えることがよくあります。矢継ぎ早に寄せられるリクエストに対し、酸欠状態(!?)になりながら、獲物を探し当てるような仕事だからです。とすれば、Hospital Formularyは、海女さんに「酸素ボンベ」を背負わすような行為なのかもしれません。 「海女なら素潜りできるように鍛えるべきだ」という意見もあろうかと思います。ただ、我々にとって大切なのは「素潜りできること」ではなく、獲物をいかに美味しく調理(評価・判断)することだった筈です。見渡せば、「荒波」の医療現場に放り込まれたうら若き海女たちは皆、酸欠状態でアップアップで調理どころではありませんでした。そんな惨状を知り、Hospital Formularyの必要性を痛感したという訳です。

ただ、それならば市販のデータベースソフトでも実現可能な話ですよね?そこをあえて弊社のkintoneをお選びいただいた理由は?

誘導がお上手ですね(笑)。スタンドアローンだと今度は「時間的障壁」と「物理的障壁」がクリアできませんものね。かと言って、大学(例.G.P.I.S.)みたいに莫大なコストと労力をかけてシステム開発する訳にもいきません。そこで「引き寄せ」られるようにたどり着いたのが、クラウド型データベース「kintone」だった、という訳です。

ありがとうございます。数ある製品の中で、一体kintoneのどのような点が目を引いたのでしょうか?

フフフフ。それは貴社のホームページに書いてある通りですよ。わざわざ言わせるんですか?(笑)

そこを何とかお願いします<(_ _)>。

※kintoneホームページより
①例えばこんなアプリを3分で作成
②プログラミングせずに作れる
③システム連携や、高度な開発にも対応
④「お手頃価格」でスタートできます。

まず①は大きかったですね。既にデータベース(Excel)は作っていたのですから。それを簡単にkintoneに移植できて楽でした。②も凄く助かりました。お恥ずかしい話ですが、DI担当とはいえデータベースの知識に長けている訳ではありません。学会では、ファイルメーカーなどを駆使したシステムが数多く発表されていますが、そんな真似はとてもできない。ましてプログラミングなんて…。きっと、ソフトが使えるようになる前に薬剤師人生が終わってしまうことでしょう(涙)。後で知った話ですが、kintoneは全国的にも有数のノンプログラミングツールなんですよね?違いました?③に関しては、現状ではたいして高度なことはやってはいないんですが、拡張性の高さは心強いです。④も大切なポイントでした。年間5万円未満のコストでここまでやれるのは驚異的でした。昔なら軽く1、2桁は違ってたところでしょうから。

【kintoneに関する取材記事】 第1回 薬剤師業務の変貌

※実はこの記事、結局陽の目を見ることはありませんでした。取材依頼元を私が勝手にサイボウズ社と勘違いしてしまったからです(実際の依頼元はSBクリエイティブ株式会社でした)。つまり、早合点して書いてしまった(汗)想定問答集。ただ、素人向けに書いていますし、私が「クラウド型」を制作するに至った経緯やkintoneのメリットが理解しやすいと思いますので、この機会に大公開させていただきます。


日頃より弊社のkintoneをご愛顧いただきましてありがとうございます。まず最初にkintoneを用いてHospital Formularyというシステムを構築されるに至った経緯についてお話いただけますでしょうか?

こちらこそお世話になっています(笑)。経緯をお話する前にこちらから質問です。皆さんは(病院)薬剤師という職業にどのようなイメージを持たれているでしょうか?…ご存知なくても無理はありません。「ドクターX」「JIN-仁-」「コウノドリ」…。医療ドラマがこれだけ人気を博しているにもかかわらず、薬剤師なんてほとんど登場しませんものね(苦笑)。「薬を作る(処方箋をもとに調剤する)人」、恐らくそれが関の山でしょう。しかし、驚かないでください。最近の薬剤師は、薬を作る仕事がどんどん減っていっているのです。じゃあ代わりに何の仕事をしているのかというと…「情報提供」なのです。もちろん麻薬などの「医薬品管理」なども行ってはいますが、薬剤師は病棟に常駐し、チーム医療の一員として医師や看護師などの医療スタッフや患者さんに対して医薬品情報を伝達することがメインの仕事になってきているのです。

なるほど、今回構築されたHospital Formulary、直訳すれば「院内医薬品集」ですよね?つまり、時代と共に大きく変貌を遂げた薬剤師業務、特に医薬品情報の提供業務に弊社のkintoneが上手くマッチした、いうことなのですね?

まさにその通りです。使い方次第で「薬」にも「毒」にもなる。それが薬の本質です。近年の創薬技術の進歩により作用の強力な薬が次々と登場していますが、「正しい情報に基づき正しく使う」、この原則が守られなければ薬は病気を治すどころか厄災をも招きかねません。薬剤師の業務が「情報提供」にシフトした理由もそこにあるのだと思います。

そのためにHospital Formulary(院内医薬品集)が必要と?

そう、私はHospital Formularyは薬剤師にとっての「必須アイテム」だと思っています。ただ、添付文書情報をまとめただけの「従来型」の医薬品集では到底使い物にはなりません。そんなものは既に巷にあふれていますから(笑)。

「従来型」が使い物にならないというのは?

つまりこういうことです。もうだいぶ昔の話になりますが、添付文書のことを「能書」と呼んでいた頃がありました。薬は効能と使い方(用法・用量)さえわかれば事足りる、そんな時代だったのです。けれど、今はそういう訳にはいきません。医療の現場で必要とされる医薬品情報は非常に多岐に渡っており、添付文書だけではとてもまかないきれないからです。

どのような情報が必要とされるのですか?

例えば腎機能低下患者や透析患者、こういった患者さんには通常量を使用すると過量投与(中毒)になってしまう可能性があります。ならばどの程度減量すべきなのか、あるいは投与自体を避けるべきなのか、そんな質問は日常茶飯事です。それ以外にも錠剤の粉砕の可否、注射剤の溶解後の安定性や他剤との配合変化など、枚挙にいとまがありません。我々薬剤師が思いもよらぬ質問を受けることもしばしばなんです(笑)。

なるほど、多岐に渡る現場のニーズに対応できる情報源としてHospital Formularyの構築を目指された、という訳なのですね。

その通りです。私も以前は病棟を担当していたからわかるのですが、ちょっとイメージしてみてください。私が病棟で暇そうに(!?)突っ立っています。すると、その様子に気付いた医師や看護師は、薬に関する質問を私に次々浴びせて来るのです。顔見知りから順番に「前から聞きたかったんだけど」の枕詞付きで(笑)。いかに潜在的な質問が多いのか、いかに薬に関して疑問や不安を抱えながら医療現場が回っているのかの証左だと思います。病棟で薬剤師が果たすべき役割はこのことからもわかります。

しかし、Hospital Formularyには克服すべき「三つの壁」があったのです。
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