※実はこの記事、結局陽の目を見ることはありませんでした。取材依頼元を私が勝手にサイボウズ社と勘違いしてしまったからです(実際の依頼元はSBクリエイティブ株式会社でした)。つまり、早合点して書いてしまった(汗)想定問答集。ただ、素人向けに書いていますし、私が「クラウド型」を制作するに至った経緯やkintoneのメリットが理解しやすいと思いますので、この機会に大公開させていただきます。


日頃より弊社のkintoneをご愛顧いただきましてありがとうございます。まず最初にkintoneを用いてHospital Formularyというシステムを構築されるに至った経緯についてお話いただけますでしょうか?

こちらこそお世話になっています(笑)。経緯をお話する前にこちらから質問です。皆さんは(病院)薬剤師という職業にどのようなイメージを持たれているでしょうか?…ご存知なくても無理はありません。「ドクターX」「JIN-仁-」「コウノドリ」…。医療ドラマがこれだけ人気を博しているにもかかわらず、薬剤師なんてほとんど登場しませんものね(苦笑)。「薬を作る(処方箋をもとに調剤する)人」、恐らくそれが関の山でしょう。しかし、驚かないでください。最近の薬剤師は、薬を作る仕事がどんどん減っていっているのです。じゃあ代わりに何の仕事をしているのかというと…「情報提供」なのです。もちろん麻薬などの「医薬品管理」なども行ってはいますが、薬剤師は病棟に常駐し、チーム医療の一員として医師や看護師などの医療スタッフや患者さんに対して医薬品情報を伝達することがメインの仕事になってきているのです。

なるほど、今回構築されたHospital Formulary、直訳すれば「院内医薬品集」ですよね?つまり、時代と共に大きく変貌を遂げた薬剤師業務、特に医薬品情報の提供業務に弊社のkintoneが上手くマッチした、いうことなのですね?

まさにその通りです。使い方次第で「薬」にも「毒」にもなる。それが薬の本質です。近年の創薬技術の進歩により作用の強力な薬が次々と登場していますが、「正しい情報に基づき正しく使う」、この原則が守られなければ薬は病気を治すどころか厄災をも招きかねません。薬剤師の業務が「情報提供」にシフトした理由もそこにあるのだと思います。

そのためにHospital Formulary(院内医薬品集)が必要と?

そう、私はHospital Formularyは薬剤師にとっての「必須アイテム」だと思っています。ただ、添付文書情報をまとめただけの「従来型」の医薬品集では到底使い物にはなりません。そんなものは既に巷にあふれていますから(笑)。

「従来型」が使い物にならないというのは?

つまりこういうことです。もうだいぶ昔の話になりますが、添付文書のことを「能書」と呼んでいた頃がありました。薬は効能と使い方(用法・用量)さえわかれば事足りる、そんな時代だったのです。けれど、今はそういう訳にはいきません。医療の現場で必要とされる医薬品情報は非常に多岐に渡っており、添付文書だけではとてもまかないきれないからです。

どのような情報が必要とされるのですか?

例えば腎機能低下患者や透析患者、こういった患者さんには通常量を使用すると過量投与(中毒)になってしまう可能性があります。ならばどの程度減量すべきなのか、あるいは投与自体を避けるべきなのか、そんな質問は日常茶飯事です。それ以外にも錠剤の粉砕の可否、注射剤の溶解後の安定性や他剤との配合変化など、枚挙にいとまがありません。我々薬剤師が思いもよらぬ質問を受けることもしばしばなんです(笑)。

なるほど、多岐に渡る現場のニーズに対応できる情報源としてHospital Formularyの構築を目指された、という訳なのですね。

その通りです。私も以前は病棟を担当していたからわかるのですが、ちょっとイメージしてみてください。私が病棟で暇そうに(!?)突っ立っています。すると、その様子に気付いた医師や看護師は、薬に関する質問を私に次々浴びせて来るのです。顔見知りから順番に「前から聞きたかったんだけど」の枕詞付きで(笑)。いかに潜在的な質問が多いのか、いかに薬に関して疑問や不安を抱えながら医療現場が回っているのかの証左だと思います。病棟で薬剤師が果たすべき役割はこのことからもわかります。

しかし、Hospital Formularyには克服すべき「三つの壁」があったのです。