※2018年4月8日より開始したこのブログ。本日より再送信していきます。
本題に入る前に、是非とも説明しておかなければならないことがあります。それは・・・
クラウド型院内医薬品集だと、なぜ薬剤師不足でも業務改善ができるのか?
自分の言動には責任を持たねばなりません。
なので、私が「クラウド型」を推す理由を、これより数回に分けて解説していこうと思います。
まず一つ目の理由は情報収集が迅速・簡単だから、です。
私が考案したクラウド型院内医薬品集(Hospital Formulary)は、「処方(編)」と「注射(編)」の二部構成となってはいますが、薬品名検索だけであらゆる医薬品情報にアクセスできる仕組みとなっています。
コンテンツの詳細については後に譲りますが、添付文書には載っていない情報、例えば粉砕・脱カプセル・簡易懸濁法の可否や、透析・腎機能障害患者の用量や、同種同効薬リストや用量換算基準などを迅速・簡単に調べることができるようになっています。
これらは、本来ならば書籍やWebサイトなどで調べなければ入手できない情報です。
クラウド型院内医薬品集には、それら汎用情報をも盛り込んであるのです。
それがなぜ業務改善につながるのか?
それは浮いた時間を別の業務に充てることができるからです。
今までに少しでも病棟業務を経験されたことのある方なら、きっと納得される筈です。
医療の現場おいて、医師・看護師からの問い合わせの勢いはとても凄まじいものです。
一つ処理しようとしたら、矢継ぎ早に掛かって来る電話。
情報収集に要する時間は短いに越したことはありません。
クラウド型院内医薬品集は、2015年の導入以来、多くのスタッフから支持を集めています。
【付記】
導入初期、先輩薬剤師よりこんな意見が出されました。
(便利過ぎて)若手の成長を妨げてしまうのではないか?
ただ、その懸念は杞憂に終わりました。
今では、むしろ情報を評価・加工する能力を伸ばすことに貢献できていると確信しています。
こちらの記事もどうぞ ⇒ 「DI≒ 海女」
「第四話 リテラシーの支援」
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私が「クラウド型」を推す理由
薬剤師業務の変貌に伴い、DI業務もまた変化を求められています。
「薬剤師一人一人がDI業務の担い手」
そんな時代が訪れているのです。
ただ、いざそれを実践しようとすると、真っ先に突き当たる「壁」があります。
それは「時間の壁」と「距離の壁」です。
医療は24時間体制で回っています。
よって、薬に関する問い合わせもまた時を選んではくれません。
ところが、これに対しDI室がカバーできるのは、1週間のうちでたった1/4に過ぎません。
※1週間(24時間×7日=168時間)のうち、DI室が稼動しているのは平日日勤帯(8時間×5日=40時間)のみであり、稼働率は23.8%(=40時間÷168時間×100)と計算される。
これが「時間の壁」です。
なので、残り3/4をカバーする方策を考える必要が生じてきます。
薬剤師は調剤室を飛び出し、病棟を始め様々な部署で活躍する時代となりました。
必然的にDI室に依存した既存の情報収集体制は限界を迎えることとなります。
書籍や資料を見るためだけに、薬剤師たちは遠く離れたDI室をそう何度も訪れる訳にはいかないからです。
これが「距離の壁」です。
DI室を訪れずとも情報を入手できる方策が必要です。
「クラウド型」ならば、この「時間と距離の壁」が造作もなく克服できます。
いわば情報収集の「いつでも化」「どこでも化」です。
これに関しては、もはや説明は不要かと思います。
【付記】
「クラウド型」は他施設とも共有できるため、地域連携に威力を発揮します。
インターネット環境とデバイス(PC・タブレット・スマホ)さえあれば設備投資は一切不要。
セキュアアクセス等を用いて、対外秘の情報が漏れることなく安全に情報共有を行えます。
こちらの記事もどうぞ ⇒ フォーミュラリーによろしく 第3話「苦悩」
フォーミュラリーによろしく 第4話「決意」
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「クラウド型」を推す三つ目の理由は、「能力差」の出にくさです。
今や医療ニーズは多様化・専門化・複雑化する一方。
添付文書の内容を掲載しただけの「古典的」な医薬品集はもはや使い物になりません。
必然的に薬剤師は、添付文書に記載されていない情報を入手するために、文献を調べたり、ネットで検索したり、メーカーに照会したりしなければなりません。
従来以上にDIリテラシー(目的の医薬品情報にたどり着き、それを正しく有効に利用できる能力)が要求される時代。
言い換えれば、それだけ薬剤師間の「能力差」が出やすい時代が到来しているのです。
問い合わせを受けた際の薬剤師の対応を眺めてみると一目瞭然です。
ベテランは即座に文献を紐解き、それを元に最適な回答を返します。
ところが、若手は目的とする情報にたどり着くのが精一杯。
情報を十分に吟味できぬまま回答してしまったり、先輩に教えられたままの情報を返さざるを得なかったケースも散見します。
※6年制に移行したとはいえ、DI業務に関する教育体制はまだまだ不十分のようです。
このままではベテランと若手の「能力差」は開く一方です。
下記は「医療機関で普遍的に必要とされる医薬品情報の調査」(谷藤 亜希子, 野崎 晃, 槇本 博雄, 平野 剛, 平井 みどり;医薬品情報学 Vol.19 (2017) No.2 p.82-90)で紹介された、各医療機関のDI室で作成されている資料(アンケート結果)です。
・術前休薬に関する資料
・フィルター使用やルートの素材に注意が必要な注射薬の資料
・ハイリスク薬の一覧資料
・内服薬の簡易懸濁・粉砕・分割・一包化の可否に関する資料
・インスリン製剤の一覧資料
・注射薬の配合変化に関する資料
・注射薬の安定性(溶解性・外袋開封時。冷所保存逸脱時)に関する資料
・オピオイド薬の投与量換算の資料
・運転等に注意を要する薬品の資料
・注射薬の血管外漏出に関する資料
・投薬日数に上限のある薬剤(麻薬・向精神薬他)の資料
・定期的な検査を要する薬剤の資料
・腎機能障害・肝機能障害時の投与について注意が必要な薬剤の資料
・小児の投薬量の資料
・採用薬の後発品と先発品の対応表
・造影検査時に注意が必要な薬剤(ビグアナイド薬他)の資料
・抗菌薬の分類・投与量・略号などの資料
・輸液注射薬の組成表
・配合剤と採用薬の対応表
・相互作用の資料(グレープフルーツ・食品との相互作用)
・外用剤の安定性に関する資料(軟膏や吸入剤の開封後の使用期限)
・ステロイド外皮用剤の効力別の一覧資料
・注射薬(主に輸液)のバッグ予備容量
・注射用抗がん剤の調製に関する資料
・吸入薬の分類やデバイスをまとめた一覧資料
・抗がん剤レジメンの資料
・MRI時に注意が必要な外用剤(金属支持体の貼付剤)の一覧資料
・名称や外観が類似する薬品の一覧資料
・妊婦・授乳婦への投薬(解熱鎮痛薬を中心に、診療時間外に処方される頻度が多い薬剤の中で妊婦・授乳婦へ投薬が可能なものの一覧)
・禁忌に記載のある疾患名との対応表
・中毒時の対応と解毒薬の資料
このような汎用情報も「クラウド型」ならば自由自在に盛り込むことが可能です。
そして、薬品名検索のみであらゆる情報に迅速アクセス!
情報の「収集」が容易になれば、情報の「評価」「加工」に充てる余力が持てます。
そうなれば、「能力差」も早晩縮小できることでしょう。
【付記】
類似の医薬品情報システムには「書籍費の削減」を謳い文句にしているものも散見します。
しかし、誤解してはいけません。
「クラウド型」はあくまで「早引き」用の情報源です。
よって、引用元の書籍は最低1冊は必要で、その利用方法は熟読しておくべきなのです。
医薬品情報は日々変動するものなので、最新の添付文書で確認する作業も不可欠です。
こちらの記事もどうぞ ⇒ フォーミュラリーによろしく 第1話「壁か扉か」
フォーミュラリーによろしく 第2話「情報の信頼性」
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以前「時間の壁」「距離の壁」の話をしましたが、「壁」はそれだけではありません。
この「多様化」もまた、薬剤師にとって大きな「壁」になりつつあるのです。
※「多様化」は今年の日本医薬品情報学会(第21回)のテーマにもなっています。
これは、近年の薬剤師業務の細分化・専門化に起因します。
例えば抗がん剤一つ取ってみても、製剤(調製)担当者に要求される情報と、病棟(薬学的管理)担当者に要求される情報は、全く「異質」「別次元」のものであり代替は利きません。
するとどういうことが起こってしまうか?
担当業務に関係のない情報には無関心になっていきます(本業で手一杯ですから)。
片や担当業務に密接した情報は、担当者にとっては「常識」になってしまいます。
無関心(=知る必要がない) vs 常識(=伝える必要がない)
かくして部署間に「多様化の壁」ができ、情報共有しようという機運が失われてしまうのです。
ただ、マンパワーが潤沢にある施設ならばそれでもいいのかもしれません。
認定・専門薬剤師が屋台骨となり、各部署が「この道一本」でやっていけるからです。
しかし、薬剤師不足の施設ではそうはいきません。
何しろ一人の薬剤師が「異質」「別次元」の部署を掛け持ちしているのですから(涙)。
情報共有を抜きにして、薬剤師業務の効率化もレベルアップも望める道理がないのです。
皆さんは広島佐伯薬剤師会が運営する「薬剤師ノート」というサイトをご存知でしょうか?
このページは今まで薬剤師が質問を受け解決したこと、また自分で疑問に思って調べたことなど、様々な知恵や知識を書き留めておくページです。自らが調査した事例は将来他の薬剤師も調べることがあるかもしれません。そのような時に参考となる百科事典を作成することがこのページの目的です。
(薬剤師ノートHPより引用)
秀逸なアイデアですが、実は「クラウド型」でもこれと同じことが実現できます。
後述するプラットフォーム「kintone」にはコメント欄の機能が標準装備されています。
一種の掲示板機能なのですが、当院では薬品毎に設けられているこのコメント欄に自らが入手した「再現性」のあるDI実例を書き込んでもらうルールとしたのです。
すると、これまで自力では知り得なかった「多様化」情報が蓄積されていくこととなります。
いわば、薬剤師の薬剤師による薬剤師のための医薬品集
将来的に「クラウド型」は、薬剤師業務のどのようなシーンにおいてもサポート可能な情報源へと成長していくことでしょう。
※ちなみに当院では「薬剤師ノート」のリンクも薬品毎に「クラウド型」に貼付しています。
これは既存の医薬品集では得られない機能です。
【付記】
当院ではコメント欄に「適応外使用情報」「ローカルルール」「メーカー会員サイトのID/PW」なども書き込んでいます(結構重宝します)。
コメント欄に自由に書き込みができるのは便利ですが、情報の信頼性に懸念が残ります。
kintoneでは、新着コメントがポータル画面に表示される仕組みとなっています。
よって、疑問点があれば投稿者に質問することも、補足することも可能なのです。
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「おいおい、真似できないって、『クラウド型』の制作方法を紹介するブログじゃなかったの?」
・・・と突っ込まれそうですが、それは誤解なので、まあちょっと待ってください。
ここまでの記事を読まれて、皆さんは「クラウド型」の有用性に納得されたことと思います。
※そうでなければ、ここまでは読み進まない筈ですものね。
とすると、ある素朴な疑問が生まれます。
それほど利用価値の高い「クラウド型院内医薬品集」が、なぜ商品化されないのか?
ネット全盛の時代にもかかわらず、ですよ。
そのネットで私も随分探しましたが、一切見つかりませんでした。
その代わり「冊子型」「CD型」ならば見つかりました。
しかし、それらはいわば「病院機能評価をパスすることが主眼」のツール。
実用性の乏しい「作ったら終わり」の商品と言わざるを得ない印象を受けました。
・・・言葉が過ぎたようならば謝ります。
ただ、最新の情報が要求される医療の現場において、年1回とか年4回の更新頻度の医薬品集では、もはや使い物になり得ないのです。
話を元に戻します。
「クラウド型」がなぜ世の中で売られていないのか?
その理由は冷静に考えてみればすぐにわかります。
まず、プラットフォームの構築に莫大な費用がかかるからです。
このブログでは、プラットフォームとしてサイボウズ社の「kintone」を利用します。
しかし、この「クラウド型」をサイボウズ社が制作・販売するのならともかく、他社がそれをやろうとすると、「kintone」と同等かそれ以上のプラットフォームを開発する必要が生じます。
コンテンツの作成も相当難儀する筈です。
後述しますが、このブログでは、コンテンツをPMDA・製薬メーカー・医薬品卸等のサイトのリンクを貼付して作成します。
ところが、基本的にこれらのサイトは医療従事者にしか利用を許可していません。
※会員登録やリンク許可申請を要求されるサイトも多いです。
あと、「注射薬調剤監査マニュアル」や「錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック」といった定番の書籍のデータも引用しています。
ビジネスとして「クラウド型」を販売するからには、これらの出版社に多額の利用料を支払う必要がある筈なのです。
ほとんど知名度のない商品ですから、大々的に広告を打つ必要もあります。
そう考えていくと、「クラウド型」の商品化への道は相当に険しいことがわかります。
しかも、施設毎に採用薬品は異なるためオーダーメイドが原則。
リアルタイム更新が原則(最低でも毎月更新!?)。
結局、「クラウド型」を商品化しようと思ったら、相当な高額商品にならざるを得ません。
以上が「クラウド型」が世の中に存在しない理由と私は考えます。
ところが、皆さんは医療従事者。
このブログを参考に自作すれば、極めて「有用」で「安価(kintone利用料として年間5万程度)」で「唯一無二」の「クラウド型」が手に入るのです。
私はそれをもう5年も前に考案し、活用し、改良してきたのです。
「ユーザーの声」をご紹介したその後は、いよいよ制作方法を解説していきます。
是非ご期待ください。
【付記】
ここまでの記事を読まれて、お気付きになられた方もおられるかもしれません。
そうです、実はこの話には、ある大きな「矛盾」があるのです。
でも・・・願わくばそれはいったん頭の片隅に置いておいてください。
このブログを最後まで読んでいただければ、きっとご納得いただける筈ですから。
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